鰹節について
鰹節の質とは何か
鰹節には様々な種類があり、同じ種類の鰹節でも「質」の違いが明確にあります。そのため、弊社でもお客様の微妙なお好みに合うように、細かくグレード分けを行ったり、原料の指定を設定して対応しております。いわゆる「上質なものほど高価」という方程式は鰹節にも成り立つわけですが、ここで見落としやすいのが、求める味のイメージによっては、必ずしも「上質な物=求めている味」にはならないという事実です。
そもそも「だし」は、それ自体が主役になることはなく、料理の中で旨味という土台を支える名脇役といえます。その意味では、最終的に問題になるのは、鰹節自体が上質かどうか、だし自体が良いかどうかというよりも、「料理として出来上がった時においしいかどうか」です。もちろん上質かどうかも重要な判断基準なのですが、これだけで判断をしてしまうのはとても危険なことなのです。
鰹節問屋の言うところの『上質』
このことをご説明する前に、鰹節における「質」とは何なのかを整理しましょう。
まず、鰹節問屋が言うところの「上質な鰹節」とは何かと言うと、「料理の邪魔をしてしまうような雑味やエグ味のでにくい、すっきりとしただしが取れるもの」を指します。これを左右する要件としては、脂肪分が多いか少ないか、枯れ(乾燥)が十分に進んでいるかいないかが、主に問題となります。一般的に、もともとの魚に含まれる脂肪分が少ないカビ付節(枯節)で、枯れも十分に進んだものほどすっきりとしただしがとれるようになりますが、実際にこうした鰹節に仕上げるには、良質の原魚を使って職人の手で丁寧に加工し、出来上がったものを長い時間(本節の場合、最長で2年程度)をかけて乾燥・熟成させていくという、大変な手間と時間がかかるため、その分高価なものとなります。ここでは上質=高価と考えて差し支えはないでしょう。
では、何故このような「すっきりとしていて雑味が少ないものが良い」のでしょうか。この考えの根底にあるのが「和食」であり「そばつゆ」です。和食では素材の持つ魅力を存分に活かす料理の組み立てが重要となります。そのため、素材の味を最大限に活かし、かつ旨味を支えることのできるだしを求めていくと、すっきりとしただしが取れる上質な鰹節が向いているのです。
和食では、コクが出やすい反面、雑味や臭みも出やすい宗田節やサバ節などがメインで使われることは少なく、比較的さっぱりとしただしが取れる本節が主に使われます。だしを取る際も、薄削りで短時間でさっとだしを取り、旨味だけを引き出す方法が主流です。場合によっては、雑味が出やすい本節の血合いの部分を取り除いた「血合抜削り」も使用されます。いずれも、素材の持ち味を邪魔しない上品な旨味を目指した結果と言えるでしょう。